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農業の大部分は太陽の光と熱を利用する産業である。したがって天候次第で豊作となったり凶作となったりするのは当然のことと考えられている。 施設園芸も農業であるから大まかには天候次第といって間違いないのであるが、被覆物で覆い、内部の気象を多少とも調節できるから、そこに調節のさまざまな技術が生れる。作物に必要な光についてその量と質の調節の概要を述べてみよう。 光量の調節 施設園芸の主要な時期を冬とすれば、日は短く光量が少ないので多くの作物は光量不足の状態に置かれている。不足の時の調節とは増やすことしかないが通常それは不可能である。自然の光をより多く作物に当てるしかない。光をさえぎる最たるものはハウスの被覆物であるから光線透過率が良く、それが長持ちするフィルムを展張する。フィルムの防じん性や無滴性とその接続性は特に注意して選ぶ必要がある。 ハウスの周年利用化が進むと低温期でない栽培も考える必要がある。特に夏季でのハウス栽培は地球の温暖化もあって問題である。ハウス内を過高温にする太陽エネルギーは可視光、不可視光を問わず太陽光のすべてが関係するから、これらをすべて遮光する資材で一応温度を下げることは可能である。しかしながら、作物が生育するためには光合成を行う必要があり、その必要な光は400〜750ナノメートルの可視光域にある。したがって光合成に必要な光はある程度透過させ、なおかつ温度を下げようとすれば可視光以外でエネルギーの大きい遠赤色光以外の波長の部分を遮断する必要がある。なかなか都合よく必要な光だけを入れて温度を下げるフィルムを作ることは困難なのであるが、夏は温度が高いだけでなく、光も必要以上に多いので多少の可視光の低下は目をつぶる、と割り切ればできない訳ではない。そのような考えのもとにできたのが「メガクール」というフィルムである。第1図のように可視光の減衰も多少はあるが、遠赤色光はかなりカットされているため内部の温度を数度下げることができる。他の遮光資材に比べれれば可視光はかなり入るので同化作用への影響は少なく、光の多い夏季に限れば生育に支障が少なく温度を下げることができる。換気通風を良好にするハウス構造と合せ利用すると夏作物の栽培や育苗に威力を発揮するであろう。 ![]() 光質の調節 太陽の光の量を増やすことはできない、と前述したが、光質を変換して作物に有効な光に変えることは可能である。光合成に有効な光は赤と青であることは良く知られているが、その赤と青を増やそうというのである。光合成には無効とみられる紫外線を青に、また緑を赤に変えようとするのである。光質を変換する蛍光物質をフィルムに加えることでそれは理論的には可能なのであるが、まだ効果が確実で長持ちする蛍光物質が存在せず理論倒れに終わっている。さて、作物の生育は光の量だけに左右されている訳ではない。光の質も関係している。紫外線をカットすると作物の体中の生育ホルモン(ジベレリンやIAA)が増加し、生育がおう勢になることはよく知られている。紫外線と波長が近い青い光のカット(人間の目には補色の関係で赤く見える)も紫外線と同様に生育ホルモンが増加することが知られており、伸長成長、肥大成長ともに盛んになるが、青い光は光合成の有効波長でもあるのであまり少なくしてしまうと同化養分が不足して成長の原料が不足し、結局単なる水ぶくれになってしまうので、その下限は微妙である。同様に光が少ない時期での使用も問題となろう。赤い色のべたがけ資材(開発中)の栽培テストがこれらの答えを近いうちに出してくれるであろう(第2図)。 赤い色より波長が長い遠赤色光は人間の目にはあまり見えないし、光合成とも関係ないのであるが、生育には大きな影響を与えている。温度を上げる作用(遮れば温度を下げる)があることは先にも述べたがそれ以外にも作物の生育とも関係している。特に赤い色との比率を変えると生育の様相が変わってくる。赤い光(R)が比較的少なく遠赤色光(FR)が多いと作物はよく伸びるが逆にRが多くFRが少ないと成長がコンパクトになる(前者をR/FR比が小、後者をR/FR比が大という)。 したがって、光量調節の項で述べた「メガクール」は温度を下げる効果とともにR/FR比が大きいので、生育をコンパクトにする効果も合せもつ光質の調節フィルムでもあるのである。高温時の遮光は温度は下がるがとかく徒長しやすいので、この性質を有することは夏の育苗や夏野菜の栽培にはうまく利用できるケースが多いのではないだろうか。 「メガクール」と反対の光質を有するのは青パオパオである。赤い光をカットすると青く見えるのであるがRが少なくFRは変わらないのでR/FR比は当然小さくなり、伸長成長も盛んにする。ただしこの資材も光合成の有効波長の赤色をカットしているので、光不足が生長の制限因子となっている場合には長期の被覆ではマイナスになることもあるし、白いパオパオ(たとえばパオパオ90)より温度が下がるので温度不足のときには効果がないケースも考えられる。(第3図)。 以上、光量や光質の調節資材は今のところ太陽光の全部あるいは一部をカットする(増やすことはできない)でしか作れないため、その実用的な利用場面は限定的である。また季節や作物によっても効果が変わることもある。現地での試験被覆を行った結果をよく検討して実用化に向かう必要があろう。また生育の全期間でなく目的にあった一時期のみ使用し、前後はとりはずす使い方も有効な場面があるかも知れない。新しく生まれた資材を生かすためにも有効な利用法を模索してもらいたものである。
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